移住者インタビューその15
徐 銓軼(じょ せんい)さん(36歳)
中国上海市生まれ、上海市育ち。日本の大学を卒業後、上海の福島県上海事務所に勤務していましたが、その後念願叶い再度日本へ。福島県国際交流員を5年勤め、2018年からは奥会津振興センターの地域おこし協力隊となる。情報発信や六次化商品の開発、移住定住・二地域居住の促進など多岐にわたる業務を担当しています。また、2020年3月より町内に空き家を借り住み始めました。
これまでを振り返って
日本での計15年を振り返ってみると、一つのストーリーとして一貫性があるなと感じています。大都市(大阪市)から地方都市(福島市)そして奥会津(三島町)へ。北へ北へ、また人口が少ない方へ少ない方へとだんだんとフォーカスが定まってきました。
もともと家系的に日本とつながりがあったことから、日本の文化に興味があり、関西の大学に留学しました。留学生活を通して、技術等大きく進歩している部分もありますが、生活リズムや人の温かさなどいい意味で日本は変わらない、日本の生活は自分には向いているなと感じました。大学では、高齢者福祉を学んでいましたが、当時は現地で学ぶ機会はほとんどなく、また日本での就職は叶わず、一度は上海へ戻りましたが、こうして三島町に住むようになり、高齢化や過疎化を目の当たりにし、10年以上遅れで、大学で学んだことを勉強しなおしている気がしています。そして、日本の大学生活は無駄ではなかった、全てはつながっているんだと感じています。
出会いなどは自分の意思では左右できない部分もあり、「たまたま」と言ってしまえばそれまでですが、その「たまたま」がここでは高確率で起きているように感じています。そして「たまたま」の積み重ねが自分をここまで導いてくれのだと思っています。
三島町での暮らしについて
奥会津(主に柳津町、三島町、金山町、昭和村、只見町の5町村)、さらには三島町とつながっていたいと思い、今年の3月より町内の空き家を借りることにしました。築80年ほどの古民家です。「三島町でどこが一番好きか?」と聞かれたら、「自宅!」と答えるくらい気に入っています。これまでは団地に住んでいたので、近所の方との関わりもほとんどありませんでしたが、ここを借りたことで、地域のみなさんとの交流が生まれ、それが何よりよかったことです。DIYでブランコやイスを作ったり、囲炉裏でバーベキューをしたり、裏で畑をしたりと、この夏は色々楽しみました。また、自分が草刈り機を使うなんて、想像もしていませんでしたが、暮らしに必要なことも学んでいます。生涯のプロジェクトととして、この家を整えていきたいと考えています。
協力隊としての業務には、移住定住促進も含まれていますが、自分の暮らし、ありのままの日常生活を様々な媒体でお見せしています。もし自分が奥会津でうまく暮らしていけるのなら、他の誰でもうまく暮らしていけるのではないかと考えています。そのためには、「自分でもここで楽しく暮せるよ」と身をもって証明するのが一番。テレビ番組含めメディア出演も好機ととらえ、快く引き受けています。自分が一つのツールとなって、三島町や奥会津、福島の魅力が伝わればと思います。
もう一つ、三島町に来てよかったと思っていることが、台湾とのつながりを持てたことです。ここには只見線や雪景色を見に多くの台湾人が訪れます。町内で道に迷っている人に声をかけたことで交流が生まれ、その後も関係が続いている人もおり、訪れたことのなかった台湾に、昨年は公私併せて7回も行きました。台湾と奥会津は180度違う暮らしですが、関わるうちに共通点が見えてくるようになりました。台湾の人々は只見線が一つのきっかけでこちらに来ますが、なぜ彼らが奥会津に惹かれるのかその理由も少しずつわかってきた気がします。
三島町は暮らしやすい場所です。面積は小さく、人口も少ないですが、地区ごとの特徴もあり、自分にとっては人との距離感もちょうどいいです。小さな子どもが二人おり、緊急時に病院へ行くことなども、ここだと対応できるなと考えています(総合病院まで車で35分ほど)。
いい思い出をたくさんいただける三島町。そして、どこかほっとけないと感じさせる町でもある三島町。これから、ますます町のために貢献していきたいと思っています。そして、ぜひ多くの方に四季折々の美しさを存分に楽しみ、日本で最も美しい町の生活を体験していただけるといいです。
徐さんに関する記事
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インタビューを終えて
インタビュー中、「感謝」という言葉をよく口にしていたのが印象的でしたが、与えられた機会にどう対応するかは人ぞれぞれ。徐さんの何事に対しても素直に前向きに向き合う姿勢が、徐さんの人生をより豊かで面白く、楽しいものへ導いてくださったんだろうなということを強く感じました。福島、奥会津、三島への愛にあふれ、自分がここにいる理由について意識的で、できることをやっていきたいと全力で取り組んでいる徐さんを、これからも心から応援したいと思っています。